トラウマ的出来事とは、身体的、感情的、心理的な困難や災害、被災体験であり、事故、手術なども含めて個人的な安全を脅かしたと感じられるような体験のことです。出来事の大きさや被害の程度が、トラウマ症状の程度に比例するとは限りません。緊急時に、恐怖感と無力感を伴い、闘争・逃走反応が完了せずに神経系に滞ってしまうと、それがトラウマとなってPTSDの発症に繋がり、身体症状や心理症状として出てくるのです。
また慢性的なストレスも無視できません。私たちの生活は、日常的にストレスにさらされています。命の危機というほどの出来事でなくても、慢性的なストレスにさらされて自律神経性のバランスが崩れることはよく起こります。また過去に大きな出来事を身体験した人が、成人してからストレスにさらされ続けると、相乗的に身体の許容範囲が狭くなり、些細なことに過剰反応するようになったり、不安や落ち込んだり、身体が弱ったりすることがあります。「今までは耐えられていた、大丈夫だったのに」とはよく聞く言葉ですが、ストレスとはそういうふうに徐々に影響していくものなので、身体を緩めることを心がけるのは健康を保つために大切なことです。
以下のことが、個人的な安全全を脅かす危機となり、トラウマとなり得る出来事です。繰り返しますが、必ずしもトラウマとなるとは限りませんが、原因不明の身体症状や心の問題の原因や不定愁訴がこういった出来事に起因していることもあるので、過小評価しないことが大切です。
トラウマ的症状とは、起きた出来事の大小に関わらず、身体や自分の存在への安全性が脅かされた時に、無力感と恐怖を伴い、身体を防衛するためのエネルギーが未完了のまま放出されずに身体に蓄積されてしまうと、それが自律神経生理の自己調整のバランスを崩して、身体症状、精神症状として表れてくるものです。
身体にトラウマのエネルギーが溜まっていると、不安や恐い思いをした時に身体がリラックスしている「通常」モードに戻りにくくなり、神経系はさらに過敏になったり、または過剰に鈍感になり、それまで影響されなかったような、些細なことにも影響されやすくなります。症状は出来事のすぐ後から表れることもありますが、時間が経ってから出てくることの方が多く、時には何か月も何年も経ってから現れてくることもあるので、起因した出来事との関係性に気づかれずに、トラウマ症状だとは見なされないことがよくあります。特に幼少時に起きた出来事の影響は見逃されがちです。