どういうことがトラウマ的出来事となりうるか?ストレスとは?

トラウマ的出来事とは、身体的、感情的、心理的な困難や災害、被災体験であり、事故、手術なども含めて個人的な安全を脅かしたと感じられるような体験のことです。出来事の大きさや被害の程度が、トラウマ症状の程度に比例するとは限りません。緊急時に、恐怖感と無力感を伴い、闘争・逃走反応が完了せずに神経系に滞ってしまうと、それがトラウマとなってPTSDの発症に繋がり、身体症状や心理症状として出てくるのです。

また慢性的なストレスも無視できません。私たちの生活は、日常的にストレスにさらされています。命の危機というほどの出来事でなくても、慢性的なストレスにさらされて自律神経性のバランスが崩れることはよく起こります。また過去に大きな出来事を身体験した人が、成人してからストレスにさらされ続けると、相乗的に身体の許容範囲が狭くなり、些細なことに過剰反応するようになったり、不安や落ち込んだり、身体が弱ったりすることがあります。「今までは耐えられていた、大丈夫だったのに」とはよく聞く言葉ですが、ストレスとはそういうふうに徐々に影響していくものなので、身体を緩めることを心がけるのは健康を保つために大切なことです。

以下のことが、個人的な安全全を脅かす危機となり、トラウマとなり得る出来事です。繰り返しますが、必ずしもトラウマとなるとは限りませんが、原因不明の身体症状や心の問題の原因や不定愁訴がこういった出来事に起因していることもあるので、過小評価しないことが大切です。

トラウマ的な出来事、ストレスを感じる出来事

  • 事故、むち打ち、スポーツ事故、落下、転倒
  • 手術、医療的介入、長期の病気、高熱、毒
  • 戦争、紛争、拷問、テロ
  • 自然災害、火事、洪水、地震、津波
  • 海、川、プール、浴室などで溺れた、窒息
  • 戦争、拷問
  • 暴力行為、レイプ、性被害
  • 職場でのストレス、ハラスメント、人間関係、超過労働、異動、昇進、降格
  • 夫婦関係の不仲、不倫、離婚、再婚
  • 家族や自分の病気、介護
  • 家族、恋人、友人やペットの死、喪失
  • 学校でのストレス、いじめ、教師からの暴力(身体的、精神的)、転校
  • 引越し、移転
  • 幼少期の身体的虐待、性被害、言葉での虐待、ネグレクト、育児放棄、裏切り
  • 自分が母親としての出産期・周産期トラウマ、流産、不妊治療
  • 自分自身が生まれた時のバーストラウマ、母親のストレス、出産期・周産期トラウマ
  • 両親の不仲、ケンカ、DV、離婚
  • 親からの過干渉、抑圧、厳しい躾け、過度な期待、親孝行のプレッシャー
  • ジェンダーアイデンティティに関する悩み
  • 子育て、教育、進学、病気、発達障害、身身体障害、引きこもり
  • 宗教や信念の強要、強制
  • 目撃者としての恐怖身体験

 

トラウマ的症状

トラウマ的症状とは、起きた出来事の大小に関わらず、身体や自分の存在への安全性が脅かされた時に、無力感と恐怖を伴い、身体を防衛するためのエネルギーが未完了のまま放出されずに身体に蓄積されてしまうと、それが自律神経生理の自己調整のバランスを崩して、身体症状、精神症状として表れてくるものです。

身体にトラウマのエネルギーが溜まっていると、不安や恐い思いをした時に身体がリラックスしている「通常」モードに戻りにくくなり、神経系はさらに過敏になったり、または過剰に鈍感になり、それまで影響されなかったような、些細なことにも影響されやすくなります。症状は出来事のすぐ後から表れることもありますが、時間が経ってから出てくることの方が多く、時には何か月も何年も経ってから現れてくることもあるので、起因した出来事との関係性に気づかれずに、トラウマ症状だとは見なされないことがよくあります。特に幼少時に起きた出来事の影響は見逃されがちです。

身体症状

  • 心臓の動悸、呼吸(器)障害、めまい
  • 過剰に警戒して用心深い
  • ささいなことでビクッとする
  • 過活動、多動、ADD/ADHD
  • 過剰に仕事をする、予定を入れる、休まない
  • 光、音、さわられることに過敏 
  • チック、手足の震え・けいれん
  • 慢性的な痛み
  • 不眠、睡眠障害、悪夢
  • 身体を感じられない、麻痺しているような感覚
  • 頭が白くなる、ぼーっとする
  • 心因性の病気、頭痛、偏頭痛、首や背中の痛み
  • PMS、生理痛
  • 消化の問題、過敏性腸症候群(IBS)
  • 免疫システム障害
  • 皮膚の疾病
  • 環境過敏
  • 慢性疲労
  • 記憶喪失、忘れっぽい、記憶が断片的
  • 呼吸が浅い、息苦しい
  • そわそわする、落ち着かない、貧乏ゆすり

 

心理的、感情的症状

  • 生きづらい、辛い
  • 不安、パニック症状、OCD(強迫神経症)
  • 恐怖感、恐怖症(高所、閉所など)
  • フラッシュバック、嫌なイメージが湧く
  • 恥、罪悪感、自尊心の欠如
  • 怒り、不満、愚痴っぽい
  • 何かに圧倒・圧迫されるような感覚
  • 気分が変わりやすい、恥、鬱、怒り、攻撃的、イライラ
  • 無力感、喪失感、深い悲しみ
  • 決断力の低下、圧倒されている感覚
  • 潔癖すぎる、完ぺき主義
  • 自信がない
  • 親の価値観に縛られて苦しい

 

思考的症状

  • 人とうまくやれない、人が怖い、信用できない
  • わかってもらえない、報われない
  • 自立が怖い
  • 自分さえ我慢すればいいと思っている
  • 不当に扱われても自分のせいだと思いがち
  • 不当、不公平に扱われることに対して過敏で怒りがち
  • 自分らしいということがわからない
  • 周りの人の幸せが自分の幸せ、自分の幸せはわからない
  • 親孝行はしなければいけない
  • 人と愛情でつながることやコミットが難しい、
  • 人から愛情を受けることが難しい
  • きちんとしているべき、迷惑をかけてはいけない
  • 頼れない、自分一人でやる方が楽
  • 頼まれると断れない

 

行動的症状

  • 危険な状況や人に近づきがち
  • 依存しがち(喫煙、飲酒、ドラッグ、性的、仕事、食べ物、ゲーム、SNSなど)
  • 特定の場所、活動、記憶、状況や人を避ける、逃げる
  • 人との関係性を切る、疑う、試す
  • やりたいことがあるのにやらない、途中で止める
  • よく転ぶ、ぶつける
  • 爪を噛む、髪をいじる
  • 何度も同じ状況に陥る(事故、DV、だまされるなど)
  • 他人、家族、子ども、環境、状況をコントロールしがち
  • 他人の世話や言われたことを引き受けがち、頼まれると断れない
  • 誰かが困っていると正義感で見過ごせない
  • 自分のことは後回し
  • 他人からのフィードバックに過剰反応して、人とうまくやることが難しい
  • 人に気を遣い過ぎる、人の目が気になる、人に合わせてしまう
  • 自分が好きなもの・やりたいことを選べない、わからない